❶なかのさんの活動紹介

『水産学と写真のあわいで サケマスとサーミとロマと』
なかのさんのこれまでの活動や、旅において大切にしていることについて伺いました。

なかのさんの旅の数カ条:
・サケとロマのいる国ならどこでも。
・巻き込まれることを楽しむ。
・辺境などない。そこに人の暮らしがある限り。
・とにかく現地の人たちに気に入られるようにしなさい。彼らにあなたを受け入れる義務はないのだから。

❷五感の記憶が促される、情景が視覚化されるもの

『「聞く」「感触」「匂い」「味」』
 写真や映像のような記録には、視覚的に見えるもの以上の様々なものが含まれています。例えばその写真を撮った場所の音やにおい、感触などが、写真を見るだけで蘇ってくることがあります。そのような、「五感」の経験について、伺いました。

❸参加者の持ち寄ったものを、思い思いの場所に置いてみる

それぞれ持ち寄ったものを会場に置き、皆で話しました。

なかのさんから参加者へ、事前に出されていたワーク:
自分の生活や日常の中、過去のものの中、前回のフィールドワークの中で、自身の五感の記憶が促される「情景が視覚的にわかるもの」をお持ちよりください。

参加者の持ち寄ったもの(一部):

 気になった写真を何枚かプリントしてみた。
写真①:霧がすごかった。肌に触れる霧の感じを思い出す。
写真②:夏にちょうど東名高速が台風で走れなくて、下を走ってたら、海沿いで見えた風景。月と雷。車の中から写真を撮るために窓を開けたら、湿度と海の香りが入ってきた。家族には迷惑がられた。これも肌に残る記憶。
写真③:よく会いに行っていた、農家のおばあちゃんの納屋の写真。もう壊されちゃってないけど、その時話を聞いた話し声とか、おばあちゃんの表情とかを思い出す。

 粉塵、匂い、熱さを思い出す写真。
→匂いの記憶は残る。自分の場合、強烈な匂いも記憶に残るし、似たような匂いを嗅いだ時に、別の映像が浮かんできたりする。(なかのさん)

 フィールドワークの時に、福島を歩いてて。いく道が綺麗で、再生してきているな、いわきの夜も賑わっているなと思ったんだけど、帰ってきて、ゼネコンの人たちがやったと言う話しを聞いて、よく考えてみると、綺麗になってる=税金で再生された道なんだなと。その綺麗な道には人が全然いなくて。語り部のおばあさんも、口籠る時があったりして。震災までの話は楽しい話は饒舌で、震災後のはなしは弾まない。それって、グレーだと。グレーの部分がパッと見全然見えない、福島。
 見た目は綺麗だけど、原発の周りにも綺麗な再生施設はあるけど、原発のところにはいけないようになってる。古い家があるけど、入れないようになっている。居心地がいい古い場所は朽ちて、入れないようにして、綺麗な道は作る。無理矢理、実態を伴わない、再生の黒と白を感じたのが福島。この映像は白と黒が常に入れ替わっていて、それがまさに、あわいかな、と。

 「オオカミの護符」という本を読んだ時に草野や秩父には三匹獅子舞の伝統があって、それが多摩の方に伝わってきているということを知った。これ(写真)は近所のカフェ。うちの近くの青渭神社でも三匹獅子舞が行われていたが、コロナで2年間やられてなかったそう。存続の危機ということで、そのカフェで三匹獅子舞のデモンストレーションが行われた。その話をSNSで知って。ここ(住んでる場所)にもあったんだ、と思って。実際に三匹獅子舞の時に吹かれる篠笛の練習にも参加した。
 本の中で知った「三匹獅子舞」という言葉をSNSで発見して、それが実は近所の神社で行われていて、練習に参加して、篠笛を実際に吹いた。ただの単語だったものが自分の体験になっていく流れがあって、面白かった。不思議な経験をしたなと思う。

 自分の撮った写真で、五感を刺激されるものがあまりないなと思う。
 山登りが好きなんですが、山に登った時の、感覚が呼び起こされる色んな人の写真と、もらった鹿の角。自分の写真だと、最近御巣鷹の尾根というところにいったので、その写真を持ってきた。自分の撮った写真に納得いかない。人の撮ったものを見ると、刺激がある。
→撮った時点で、その撮る被写体を決めているわけで、そこには撮っている本人の感情が入ってる。私の場合もそうで、どの瞬間で撮ってるかといわれたら、感情に委ねて撮っている部分が多いと思う。そう考えると、少なくとも、これは見た人に影響を与える写真かなと。(なかのさん)

足尾銅山と渡良瀬川の周りの写真と、その辺りを自転車で回った時の映像。汚染されていながら、新しく開発をされて綺麗になった風景。自分の体の記憶があるもの。ヨシを狩ったり。
住んでいる人たちの心の中の見えない傷。

❹最後、なかのさんから

 あわいの部分でないと、表現できないものが確実にあります。そこに大事な意味を見出していくべきだと思うし、大事にしていきたいと思います。