❶岩井さんの自己紹介

岩井さんの取り組み、今までの作品制作などについてゆっくりお話をお聞きしました。

❷「 経験的道路のプロジェクション」について

岩井さんが今回参加者とともに行っていく「経験的道路のプロジェクション」についてのお話を伺いました。

「経験的道路のプロジェクション」とは:
除染作業に携わっていたとき、自らが除染した道路を写真に記録していった。それは一見どこにでもあるような住宅街の風景。今回は皆でいくつかの地域の道路にスクリーンを立て、撮影してきた道路の写真をプロジェクションするということをしたい。これを、11月20日、12月24日、1月8日の3回に分けて撮影しようと思っている。場所や方法について、不確定なところも多く、参加者と相談しながらやっていきたい。

❸予行演習「スクリーンを立ててみる」

プロジェクトの中で行う、「スクリーンを立てる・解体する」という作業を、30分(15分/15分)の時間制限の中で、実際に行ってみました。

作業(今回は1、4の工程のみ行った):
1、木枠と板でスクリーンを立てる。
2、白い壁紙を貼る/塗る
3、プロジェクターで画像を一枚一枚映す。
4、スクリーンを解体する。

❹意見交換

お伺いしたお話や、ワークをふりかえりながら、参加者との意見交換を行いました。
作業の時間帯や場所、天気といった、実施に関わる話や、参加者がそれぞれの切実さや文脈をもって参加することについて、意見が交わされました。

参加者との意見交換(一部):

参加者)今回投影される画像は、除染された時の画像?

岩井)僕が関わったところだけですね。もう5年くらい前。雰囲気は変わってるだろうけど。そこでも投影したい。作品というと変なんですけど、もう一回再経験するというか、アクションに対してのリアクションみたいなものと、記録としての写真が同居すればいいのかなと思っている。

参加者)除染というのは、方法に影響というか、現場で連想することはあるのか。岩井さんの体験を追体験したいと思うけど、どう体験できるかなと。除染関係なく、楽しいイベント、みたいな感じで終わると思うんですけど、逆に、岩井さんにとっての除染はそういう感じなのかどうなのかとか。

岩井)どうやって自分の経験したものを、何かしらフィルターかけたり、結晶化させて他の人と共有できるのかが、個人的な命題としてある。除染をやっていると環境省の方に、証拠画像を取って送らないといけないから、絶対写真を取る必要がある。あと、除染と作業が密接に関わっている。除染した時に撮った道路の写真は、僕視点の写真なんだけど、今回のスクリーンを立てて、投影して、解体するという作業は、除染してた時のチームワークに近くて、それをさらにもう一度記録に残していくという行為は、みなさんに除染してくださいというわけではないけど、シフトして、違う作業に置き換えて、記録の取り方を変えてみる、ということなのかなと思った。路上で作業することは最近あまりない。それも、除染の、シフトした経験の共有の仕方なのかなと思う。

参加者)除染だと、綺麗、汚い、境界みたいな話がついてまわると思いますが、今回の追体験では、境界とか、どんな感じで関わるのかなと。

岩井)そのものは除染と関係なくなるけど、今この作業をクルーみたいな感じでやった時に、色んな意味での境界線が出てくるなと思っている。現実の住宅街と、イメージの住宅街、そこをもう一回記録することでさらにメタ的になる。何かアクシデントが入ってきたら、より複雑になっていって、それも記録される。除染という一つの経験を通して、どれだけ枝葉を広げられるのか。それが、ジャーナリズムとか、ドキュメンタリーとは少し違う表現の仕方だったりするのかなと。除染を知ってもらいたいというよりは、それを通してどう現実の世界を解釈していけるか、ということの方がより重要なのかなと思う。あそこだったから、汚染されたかもしれないけど、「多摩地区は関係ない」というわけではないんじゃないの、とぼくは思う。あまり一つのエリアにフレーミングしたくないという思いが強い。だから色んな場所でやりたい。

参加者)切実さを持って参加できた方が、近所の人から怒られても、綺麗にしてるんだし、という気持ちでいれるかな、と。

岩井)それでいうと、除染作業員は扱われ方がひどかった。切実さとは違うかも。切実さは僕はもちろんあるけど、それがみなさんに共有できるかはわからない。全員が同じ方向を向く必要はないのかなと思う。もっと色んな角度で、色んな意見でみてもらえた方がいいのかなと思う。もうちょっと地域住民の事考えましょう、みたいな意見も僕はいいなと思う。多分、除染というのはワードとしては強いが、それをきっかけに、自分たちの立ってるところを考え直すきっかけにならないかな、と。

参加者)作品としては面白いな、と思うんですが、自分が怒られると凹むな、というのが、、、。

岩井)とりあえず、まず、僕が謝ります。住宅街の人がどれぐらい許容できるのかな、というのも、僕個人的には興味がある。道路占有許可はもちろん取りますが。その部分もそれぞれの経験になるのかな、と。

参加者)場所とか周りの圧とかは、僕らの行動にも影響しそうだなと思った。そこに直接何かの介入があるかもしれないし。15分というのが目安だったけど、時間の感覚も場所によって変わってくるのかなとか、どういう効果があるのかなとか。

参加者)場所によってはスローに、長めにやってみるのもありなのかな、と思った。

参加者)個人的な興味としては、米軍ハウスの中とか、皇居の近くとか、山とか、森とかみたいな、全然違うところとかで撮影してみたい。

参加者)自分の中で似たところを考えたんですけど、似ているようでにていないなと。街の記憶とか、そこに対する、経験を積み重ねている場所が、誰かの思いみたいなのをどう想像することができるかな、と。

岩井)自分の小さな経験を、他の人がどういうふうにそのまちを考えることにつなげるか、我がごとにできるのか。(文責:森山)